病気のプロフィール

2004年6月中旬左胸だけ大きくなる。2週間と待たずに赤く2倍の大きさに。
2004年7月上旬おみくじで大凶を引き病院へ行くことを決心。どこへ行っても乳腺炎と診断されるが一向に快方に向わず。
2004年8月下旬4番目の病院にて乳がんと判明。29歳での告知。浸潤性乳管がんのVb期。病巣が大きいため抗がん剤治療(FEC療法5クール)をうける。
2005年1月上旬手術 左乳房切除、リンパ節郭清。病理結果により炎症性乳癌と判明。リンパ節転移29/35 VC期。ホルモンレセプター、ハーセプテストともに陰性。
2005年1月下旬放射線治療始まる。50グレイを25回に分けて照射。
2005年3月下旬抗がん剤治療(タキソテール 6クール)開始。
2005年7月下旬タキソテール6クール終了。以後経過観察。
2005年12月17日ハミングバード、天国へ旅立つ。

詳しくは100の質問を見てね


家署名の件ペン


皆さんにお願いした署名が39,081名分集まり、先日5月10日に尾辻厚生労働大臣へ要望書と共に提出されました。 署名にご協力いただいた皆様、また趣旨をご理解してくださった皆様、どうもありがとうございました。 詳しくは下記のページをご覧ください。
http://home.s00.itscom.net/777/kaigo/



2005年09月10日

最終夜

百太郎(加工6).jpg

初めての金縛りは小学5年生の時で、明け方になった。
開けたドアから母たちの寝室が見えて母の枕元に三人
の男の人が母を見下ろすようにして立っていた。

その時祖母からもらったオルゴールが突然鳴りだして
金縛りは解け、男たちも消えてしまった。オルゴールの
曲は『荒城の月』。シブイ、渋すぎるっ。いい曲だけどね。


次の金縛りは間があいて高校一年生の秋の終わりだった
ように思う。その晩はなんだか寝苦しくて寝返りをうって
ばかりだった。ただ悪寒がして背中のあたりがぞわぞわ
する。寝返りをうつ時に布団から背中が離れるのがすごく
嫌で「背中を守らねば」という気持ちでいた。

しばらくしてまた寝返りをうち背中が布団から離れた時ーーー

バサッ

と音がして背中に誰かがはりつく感じがした。
体はすでに金縛りで動かない。

「とられたっーーーー」

背中をとられた私はパニックになった。
どんなにもがいても後ろの何かは離れる様子もなく、首筋
はたえずゾクゾクする。気持ち悪いし怖いしで必死で母に
助けを求めるが声が出ない。

そう、金縛りの経験のある人なら分かるだろう。口が満足
に動かなくて、出たとしても微かなかすれ声だ。

助けを求められないと分かってもなんとか抵抗しようと
私はもがいた。

(やめて こわい やめて やめて やめて−−−−−−)

必死で声を出そうとしても

「もご もご もご もご」

くらいにしか自分の耳には聞こえない

(やめて やめて やめて)

しばらく努力をするうちに声が出るような感じがしてきた。

「ひゃ、ひゃめて(や、 やめて)」

(おっ これはイケルかも)

私は思い切って力をふりしぼった。ああ、でもまだ口は動かない。

「ひ ひ ひ ひぃひぃ」



「ひゃほーう ひゃがっ ひゃっほーーーーう(やめて やめっ やめてええええーーー)」




解けた。

金縛りは解けた。

でも私の心にはわだかまりが残った。


(こんなので いいのか?!)


そう、これはまだ気合で金縛りを解くなんてことを
知らなかった時の出来事。







季節は秋。今年の怪談はこれで終わりにしようと思います。
怖いお話はまた来年☆





posted by ハミングバード at 17:20| Comment(10) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月31日

会社

百太郎(加工6).jpg

私が20歳の時に入社して8年ちょっと勤めた会社が
ある。従業員400人ほどの田舎の中小企業。経営者
を含め90%ほどの人間は変わり者で、みんなが築い
た伝説は今もなお続いている。

そしてトーゼン、怖い話だってある。

夜、営業所に最後まで一人で残っていると足音がして
ドアの前でピタッと止まっていくのは日常茶飯事。たま
に警備のおじさんだったりするらしいけど、夜の12時
過ぎに一人でいるのだから、おじさんでも正体不明でも
かなり怖いという。

一階が工場で、二階に私たちの営業所や他の部署の
事務所があった。合わせて70人くらいの人間がいた。

私がトイレで化粧直しをしていると、私の後ろを通って
誰かがトイレに入った。

(・・・あんな制服、あったっけ?)

見ると誰もいない。


廊下を歩いていると更衣室の方から白いシャツに黒い
ズボンの人が歩いてくる。

(ああ、Iさんだ。ちょっと痩せたなあ。ん?Tさん?)

顔のあたりがぼんやりとしか見えない。不思議に思って
いると、すれ違うときにその人は消えてしまった。
結局、その時Tさんは事務所にいたのだ。


工場が忙しいときは全社員が駆り出されて土日返上で
現場を手伝う。2〜3人で組んで機械を回す。

回ってる機械の奥に足が見える。

(あんなところで何してるんだろう。それに見覚え
のないスニーカーだな。誰だろ)

よく見たら、足しかなかった。


古株のおばさんが言う。

「この辺りは昔、刑場だったのよねえ」


夫も私もこの職場で一緒に働いていた。
結婚して、例のアパートで暮らしていたある夏の晩。
夜には涼しくなっていたから、きっと今頃の時分だ
ったろう。8畳間で夫が眠っていた。もう12時を
過ぎていた。

「うーん、うーん」

夫がうなされている。まあ、いつものことだと思って
いたら。

「ぅぅぅ−−、ぅわあ、うわああああああぅぅぅ」

いつもと違う脅えきった声を出した。
急いで起こすと、夫は汗をびっしりかいて
黙り込んでいる。

「怖い夢でもみたの?」

「・・・・・・・・・。」

「ねえ」

「・・・・・・・・・。」

「どうしたの」

「怖いから、いい・・・」

「話したほうが楽になるよ」

「・・・・・・・・・・。」

夫がしぶしぶ話した夢の内容はこうだった。



夢の中で夫は事務所にいた。一人で残業になって
しまい、とうとう1時を過ぎてしまった。やっと仕事を
終えて帰ろうと窓の鍵を確認していると目の前を着物を
着た女の人たちが一列になって歩いている。
事務所は二階。女たちは宙を浮いているのだ。

夫に気づくことなく女たちは夜の中を歩き続ける。



そこで、私に起こされたと言う。
私は話している夫の体が震えているのに気づいた。
こんなに怖がるなんて。

会社の裏には、きものの専門学校があった。
専門学校というよりは個人のお家でやっているお教室っ
て感じだったのだけれど。私たちがいた時に生徒さんが
いたかどうかは分からない。少し古い感じの看板が更衣
室からよく見えた。

夫が話した女たちは古めかしい格好だったらしい。
あれが何だったのか分からない。ただ女たちの歩いていた
ちょうど真後ろにその学校があったのだ。














posted by ハミングバード at 22:32| Comment(8) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月28日

新居

百太郎(加工6).jpg

前に新居を探した話を書いたけれど、最終的に住むことに
決めたアパートも実はおかしなところでした。


そこは2LDKのアパートで、北側に6畳間があってそこが
寝室。キッチンと居間を合わせて確か12畳くらいあって、
その隣に8畳の部屋。8畳の部屋にはパソコンや本を置い
て趣味に興じる部屋とした。日当たりもいいし、嫌な感じも
しないしかなり気に入って決めた物件だった。

それなのに、まず寝室で金縛りにあうことが多かった。
金縛りは日常茶飯事だったから、ものすごく怖いわけでは
なかったけれど、枕元に女の人、足元に男の人がいたのだ
からたまったものではない。私はあまり見える方ではない
けれど、たまに見えてしまうのだ!姿が見えるのはやっぱり
嫌だ。うんうん言っていると夫が起こしてくれる。夫も金縛り
にあってうんうん言っているので揺り起こす。すると今度は
私がかかる・・の繰り返し。どうやら二人いっぺんにはかけら
れないらしい。しかも夫が見たのは男女の霊ではなく「白馬」
だった・・。さわやかに駆け抜けて行ったとか。私もそっちの方
がいい〜。でもこの部屋はさすがに空気が荒んでいた気が
する。あまり入る気がしなかった。

それから8畳の部屋も金縛りにあう場所だ。
その部屋にいる時間が長い夫はよくうなされていた。自分の
体の下で誰かが横になっていて息を吹きかけられたり天井ま
で持ち上げられてぐるぐる回されていたとか。でも不思議と
怖くないという。私はぐいぐい引っ張られるような嫌な金縛り
ばっかり。夫の方が好かれていたみたい。私は邪魔だったの?

そして玄関。アパートって明り取りがなくて暗い玄関って
多いと思うのだけど、最初から母が「ここの玄関は嫌だ」
って言っていた。「ふーん、暗いのって当たり前じゃない」
って言うのに、暗い顔して無言なんだよね、母は。それでも
あまり気にしないでいたら、姉のお友だちが遊びに来た時に
そのお友だちが「ハミちゃんには言わないで欲しいのだけど
あそこの玄関、空間がゆがんでる感じがする」って言ってい
たらしい。黙っていてと言われたくせに面白がって私に言う
姉なのであった。母も変だって言っていたから妙に納得して
しまった。

その玄関近くの洗面所。広くて気に入っていたのに、何故か
うがい用のコップにいつの間にか水が溜まってる・・。
それもね〜あふれんばかりに溜まってるの。少しだったら捨て
忘れかと思うでしょ。違うの、たっぷりなの。

折角、見つけた物件がこれ。ここに2年半くらいいたけれど
この時は夢見が悪かった気がするな。実害といえばそんなも
ので文句を言いながらもかなり精力的に働いていたし、病気
もしないし意外に快調に暮らしていたのでした。








posted by ハミングバード at 23:35| Comment(10) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月16日

階段

百太郎(加工6).jpg

北海道にいた祖母が亡くなった時のこと。
私はもう社会人になっていた。

みんなでお葬式に行くつもりでいたら父が一言。

「ハミ、お前はここに残るんだ」

「ええっ、私もおばあちゃんに会いたいよ」

「ばか。だれが犬の面倒を見るんだ。うちの子は
ペットホテルになんか入れたら一日でノイローゼだ。
ええっ可哀想だと思わんのか。お前が残れ、残るん
だーーーーーっ」


うーん、確かにノイローゼになりそうな奴ではある。
おばあちゃんには悪いけれど私は家に残ることにした。

私はお化けも嫌だけど、泥棒や変質者が怖くて仕方がない。
不安で不安で一人暮らしって絶対できないと思う。一人旅
なら喜んで行くけど、一人暮らしは無理だ。

そういうわけで皆が出かけてしまった晩、私はビクビクしな
がら眠ることになった。




真夜中、ふと目が覚めた。


トントントントントン・・・


誰かが階段を登ってくる。


(ギョッ)

(泥棒?何で一人の時に来るんだよーーーー。
逃げよう、とにかく逃げよう。ベランダから
下に降りられるよね)

と無謀にも二階からベランダの支柱を伝って逃げようとした。


起き上がろうとして金縛りにあっていることに気づいた。

(わーーーー金縛りにあってる場合かっ)

(怖い、怖いよーー。逃げられないよーーー)


と思った瞬間、足音はピタリと止んで

トントントントン・・・

今度は下に向かって降りて行った。

それを聞いた私は足音の主が人ではないことを覚った。
だって私の心の中を読み取ったかのように下に降りていったのだから。
金縛りにあいつつも泥棒じゃないことが分かって安心した私はなんと
なくドア付近の天井を見た。


すると緑色の物体がふわりと浮いている。
中は青と緑でキラキラと光っている。


(うわあーーー綺麗。)

(おばあちゃん、おばちゃんだ。)

(会いにきてくれたんだねーーー)

光はすぐに消えてしまった。
おばあちゃんはキラキラひかる魂で旅立ったのだろうか。
身内は怖くないというのは本当でキラキラを見たときは
嬉しさでいっぱいだった。

わざわざ階段を登って会いに来るなんて律儀な祖母なのである。
それとも生前の記憶がそうさせるのかな。



今年も帰省した魂が押し上げた夏の空に、祖母の姿もあったの
だろうなと思う。
posted by ハミングバード at 09:22| Comment(6) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月11日

ある日の昼寝

百太郎(加工6).jpg

5年ほど営業をしていた。いわゆる外回り。田舎なので車で営業に回る。

運転に疲れた時には公園の駐車場で昼寝をすることがしばしばあった。
平日の昼間、公園の駐車場にはくたびれた営業がたくさんいるものだ。

人口の大きな池のある公園で昼寝をしていたときのこと。

そこの駐車場は池に沿って丸く車を停めるようになっている。

運転席のシートをたおし、すやすやと眠っていた。ふと気づくと
誰かが近寄ってくる。じゃりを踏む音がはっきり聞こえる。

(嫌だなあ、先輩が私の車を見つけてからかいにきたのかな、起きなきゃ。)

体を起こそうとしたら、金縛りにあった。

(あ、金縛り。うわっやだっ、眠ってるところをみられたくないーーー。)

金縛りにすっかり慣れた私は恐怖よりも恥ずかしさが優先だ。
足音はまっすぐ規則正しく、車に向かってくる。


ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ


(あれ、おかしいな。両隣には車が止まっているし、駐車場はいっぱい。
なのに、真横から人が近づいてくる気配がする。それって不可能だよね。
でもさっきからだんだんと足音が近づいてくる。)

ジャリッ。

ぞっとした瞬間。
足音がやんで運転席の真横に人がいるのが分かった。
でも気配はするのに姿は見えない。
金縛りもとけない。



自分の体に視線を移すとお腹あたりで黒い影がゆらゆらと揺れている。
まるで嘲ってるように揺らめいている。

(いる!)

(幽霊の影?)


気合をいれて金縛りをとくと、影も消えてしまった。
その後、真面目に営業に行きました。




posted by ハミングバード at 00:02| Comment(10) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

金縛り

百太郎(加工6).jpg

西側にベッドを移したのが夏の初め。
高校2年生の時だった。
それから1年間は毎日のように金縛りにあっていた。

金縛りにあいはじめて、しばらくして気がついた。
金縛りにあったあとは部屋の中が緑色に光っているのだ。

金縛りの後はぐったりと眠ってしまい、朝まで目を覚まさな
かったので最初は明け方に金縛りにあったのだと思っていたが
緑色に光るのはおかしいし、金縛り後のある時ふと目を覚まし
たら真夜中で部屋の中が真っ暗だった。

そんな変な環境にも慣れ始めた頃、金縛りにあうと耳元で

「ゴウゴウ ガサガサガサーーー」

と変な音が聞こえ出すようになった。
加えて低い男の声。一人や二人じゃない。

「ウーウーウー」
「ガアアアアア」
「アガガガガガ」

まるで獣みたいな声。
金縛りにあった私の体も映画でみた霊媒のようにガタガタ
震えだし、その男ような声まで出すことがたまにあった。

え?私、あたまがおかしいんじゃない?
それとも何かにとり憑かれてるの?

必死で金縛りを解いてはかかり、解いてはかかりの繰り返し。
そんな毎日に疲れたある晩。ものすごい金縛りにあった。
体がビリビリしびれてしまって金縛りをとく力も入らない。

ヴーン ヴーン ヴーン ビリビリビリ

首のあたりがむず痒い

(ああ、もう疲れたーーーーーーー)

と思った途端



ズルッ



嫌な感触で私は起き上がった。

上半身だけ起こしている。

何気なく振り返ると自分が寝ているのが見える。


あっ 幽体離脱・・・・?


上半身だけ抜けてしまった。


(冗談でしょ、戻れなくなる)


普段から変なのがうろついてるのを感じていた私は
自分の体がとられるのではと必死で戻ろうとした。
一生懸命体を寝かせるのに、気を抜くと「ズルッ」
しばらく抵抗しているうちに朝になっていた。
どうやら途中で疲れて眠ったらしい。

それからは金縛りにあってもあの獣じみた変な声は
聞かなくなった。あれは何だったのだろうと今でも思う。
思春期にありがちと言われればそれまでの話。

でも必死で抵抗していなかったら今頃どうなっていたのか。
最初は恐ろしかったけれど、途中から「あんたたちには
絶対に負けないから!」と強く思ったのを覚えている。



姉のベッドも一階のソファーも西側にあってそこで寝ても
金縛りにあった。2、3年はそんなことが続いた。

posted by ハミングバード at 00:02| Comment(4) | TrackBack(1) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月10日

百太郎(加工6).jpg


ベッドを置く場所はベランダのある南側か小さい窓のある西側が
最適だった。私はどちらかというと南側にベッドを置いて寝るのが
好きだった。

ある晩、コツコツと窓をたたく音がする。
月がきれいな夜だったのでレースのカーテンだけで寝ていた。

コンコン

外には誰もいない。目が悪い私にもそれは確認できた。

コツコツ、ガタガタ
コツコツ、ガタガタ

だんだん激しくなってくる。こういうのって窓を開けたり呼びかけに
応えてはいけないのでは?

「うるさいな。帰ってよ」

と怒鳴るとピタリと音は止む。しばらくするとコツコツ、ガタガタ。

「うるさいっ」

母は隣の部屋で私の怒鳴り声も窓の音も聞いていたらしい。
でも私の部屋に入るのは怖くてできなかったそうだ。


こんなことが西側にベッドを移すまでずっと続いた。
西側に移ってからは毎晩金縛りにあうようになった。
窓のノックと金縛りで金縛りを選んだ私であった。

どうしてだろう。

でも夜中に窓をノックされるのは嫌なものだよ。

posted by ハミングバード at 23:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月06日

夏の渓谷にて

百太郎(加工6).jpg

確かこれくらいの時分だった。父と母と三人で海に出かけた。
その年は冷夏で、海は冷たくて入ることができなかったので
早々に引き上げたが、帰るにはまだ早い。そこでその近く
の渓谷に足を運んだ。滝と神社があって風情があるとか。

山に入ると雨が降り始めた。
冷たい霧雨。夏とは思えない寒さだ。

観光客もまばらな駐車場に車を停める。
霧雨の降る広い駐車場。ふと一点に目がとまる。
なんのことはないガードレール。その向こうは
ただの藪になっていた。

まずは渓谷へ、小さいけれど綺麗な滝やその小川。
寒いのも平気で子どもたちが川遊びをしているのどかな風景。

(ここにいたくない)

急にそう思った。ものすごい違和感を感じる。

「もう、帰ろうよ」

「だって来たばかりだし、神社もあるよ」

「いいから、とにかく帰ろう。さ、寒いし」

「?そんなに寒い?風邪でもひいたかな。じゃ、帰ろう」

と帰路についた。


家に帰るとこちらも曇天。
だけどゾワゾワした違和感もなくなり、寒さもおさまった。
そして昼間のことをすっかり忘れて眠りについた。


サーーーーーーーー


真夜中、雨の音で目が覚めた。

(あ、渓谷と同じ霧雨・・・)

と、突然ドアが開き、姉が飛び込んできた。

「こ、怖い、コワイッ。」

半分寝ぼけて叫んでいる。わけを聞いても怖いしか言わない。
金縛りにでもあったかなと私のベッドに寝かせて、私は床に
寝ることにした。



ピチョーン・・・・
ピチョーン・・・・



霧雨に交じって水音が耳につく。
そしてそのまま眠りに落ちた。


気がつくと私は渓谷の駐車場にいた。
変わらず霧雨が降っている。
私の視線はやはりあのガードレールへ。
昼間と違うのはそこに男の人が立っていることだ。


(随分と汚い格好だな。なんか嫌な感じがする)


しかし気持ちとはうらはらに私は近づいていってしまう。
そこで私が見たものは・・・・それは









落武者だった。

泥にまみれあちこちに矢が刺さり、髪はざんばらで見るも
無残。体は傷だらけだ。赤黒く血が固まっているのが見える。
そして私に気づかず寂しげに薮の方を向いている。





その時の私の気持ちを説明するのは難しい。
私は自分でも驚くぐらいに怒っていた。

(お前か!家にまでついてきて家族を脅かすのは!!)

私は落武者の刀を抜くと、いきなり切りつけた。
目の前で崩れ落ちる落武者。それでも何度も何度も切りかかる。


(もう嫌だーーーー)


そう思って目が覚める。
そしてまたあの雨音。

サーーーーーーーーーー

ピチョーン
ピチョーン

雨音に誘われて眠りに落ちるとまたあの駐車場にいて・・・
私は彼を殺してしまう。何度も。


あれはただの夢。そう思おうとしても体を切りつけたときの
衝撃と重さ。刀の感触のリアルさ。忘れたくても忘れられない。

渓谷の場所は北茨城。怖い話にはことかかない場所なのである。
古戦場があったとは聞かないが茨城には最強の武士の根拠地が
あったくらいだ。落武者の一人や二人、いてもおかしくないのである。












posted by ハミングバード at 16:47| Comment(6) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月02日

新居を探して

百太郎(加工6).jpg

踏切があった。高校へ通うときも、就職してから営業に行く時も
よく通った踏切。
いつ頃から気づいたのかその踏切の下り方面を向くと鳥肌がたつ。
何かいるのかと思ってよくみようとするのだけれど、とてもじゃない
けど直視できない。

5年前の夏。新居となるアパートを探していた。
秋には結婚を控えていたので夏の間に決めてしまいたかった。
夫の仕事の関係で駅の近くの物件を見てまわる。なかなか見つから
ずにとうとうその踏切近くの3件を見ることになった。
不動産屋さんは来ず、鍵を預かり二人で見学。
その日は朝から太陽が照りつけてとても暑かった。


1件は新築で間取りも気にって第一候補に。二件目は築5年。
1件目が好感触だったので期待して行く。駐車場から道路を一本はさんで
6棟のメゾネット形式のアパート。
ベランダが表通りに面して、玄関は裏にあるらしい。
アパートに入ろうと近づくと入居している人の窓が目に入る。
なんだろうカーテンを押しのけて家の中の小物が積みあがっているのが
見える。ごみもある・・?荒んだ印象だった。
玄関に回るとすごい湿気。
植木らしきものが並んでいるけれどほとんど枯れている。
築5年にしては全体が古びて見えるし、なんだかここは怖い。
それでも私たちが見学する一番奥の玄関の前まで来てしまった。

「ねえ、私、ここは見たくない。なんか少し怖い気がする」
「え?なんで折角来たのに。メゾネットは初めてだし。見ようよ」

と言われ、自分の根拠のない不安を打ち消してアパートに入る。

一階。お風呂とトイレ。キッチンとダイニング。

それがすごく狭い。間取り図がおかしいのではと思える狭さ。

「ねえ、もう帰ろう。だってここ狭すぎるもの。家具の置き場が
ないよ、絶対。」

相方が言えば言うほどもう一方は見ようと言うもので2階へ向かう。
二階につくなり夫が

「あ、ここ空気が重いね。頭がくらくらする。」

と言い出した。ほらね、そうでしょ、おかしいでしょと思いつつもすでに
感覚が麻痺した私は確かに嫌な雰囲気だけど窓を閉め切ってるせい
でしょと言って部屋を見回した。

階段を登ってすぐに洋間、奥のベランダ側が和室。どちらも6畳だ。
洋間側の窓から明かりが入る。和室側は雨戸がしてあって暗い。
ふすまはとても汚れていて書かれている絵がとても古臭い。
本当に築5年なの?古い旅館に紛れ込んでしまったかのようだった。

その時何故か私はあの暗い和室のあの襖を開けたくなってしまった。
あんなに怖かったのに、あんなに嫌だったのに目が離せない。
ふすまを開けようとする私をとめる夫。



「大丈夫よ。」


と手をかけたその瞬間


バリッーーーーーーーーピシャーン


と手がはじかれた。火花が散った?
目眩と同時にものすごい悪寒。
一緒だ、あの踏切と一緒だ。


「キャアアアアッ」


気持ち悪くて思わず悲鳴をあげる私。

「はやく、早くここから出よう」

2人でアパートから飛び出して駐車場へ。
ついさっきまであんなに暑くて汗をかいていたのに2人とも全身鳥肌。
とにかくゾクゾクして寒い。

3件目に行っても悪寒は止まらず、結局その三件はやめにした。
踏切との関係は分からない。


私たちは駅近くの物件を諦め、少し遠い新築のアパートに入った。
そこは知る人ぞ知る、いわくつきのアパートでありました。






posted by ハミングバード at 17:58| Comment(6) | TrackBack(0) | 怪談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。